1月20日(日) 聖地が住宅地になっていた
土曜日(19日)、五井昌久さんの夢を見て、目が醒めた。
五井昌久さんは「世界人類が平和でありますように」と唱える宗教人。亡くなった母
が彼の熱心な信者だった。
彼が市川の料亭の離れを借りて布教に勤めていた昭和30〜40年代、母は日曜日に
なると僕を連れて「世界平和」を祈りに行った。
五井さんは優しい人で、いつも菓子をくれた。病弱な僕に「強くなれ!」と励まして
くれた。勉強しろ!なんて一度も言わなかった。
宗教に特別の関心もなかったが「良い人」という印象だけが残っている。多額のお布
施はなかったようにように思う。機関誌を購読するぐらいしか、信者の負担はなかった
。
神の存在は信じるが宗教法人なんていらない、というのが僕の考え方で、僕は「白光
真宏会」の会員にはならなかった。
ある日、京成線の踏切で、やつれた顔付きの五井さんが車の後部座席に座っているの
を発見した。駆け寄って「どうしたんですか?」と聞くと「荒行をしている」という。
もう、社会人になってからかなり経っていたので「荒行なんて止めればいいのに。た
まには芸者遊びをすればいいのに」と冗談を言ったのを覚えている。五井さんは静かに
笑っていた。
「85歳まで生きる」と言った彼が死んだのは、その直後のことだったように思う。
たしか63歳の死だった。
五井さんが亡くなってからは、この宗教団体には無縁で、さしたる興味もなかったが
……彼の夢を見るなんて不思議である。
確か市川市中国分に「聖ヶ丘」という聖地があったのを思い出し、散歩がてら向かっ
た。
道を聞きながら、やっと2時間かかって、小高い聖地に辿り着くと、そこは新興住宅
地に変貌していた。あの頃は畑の中の一軒家のような道場だったが、そこにも新しい住
宅が建ち並んでいる。
近くの蕎麦屋で“消息”を聞くと「信者さんはお山にいったんじゃない。土地を売っ
て出て行った。あとに41戸の住宅が立ったのよ」と話す。富士宮に本拠地を移したら
しい。
土地の高騰、バブル崩壊を経験し、信者たちは新しい聖地に向かった。それなりの理
由があるのだろうが、あの世の五井さんは、布教の地を離れた弟子たちをどう思ってい
るのか。何か、悲しい気分だ。
帰り、庭に夏みかんが実っているのを見つけた。ボーと立ち止まって見ていたら、こ
の家のご主人が、一つ取ってくれた。この辺りは、梅がほころび始めている。
帰りにコンビニでやっと「ダガーボ臨時増刊・投稿生活」を発見した。「二代目魁」
に書き込みしてくれている、あの四国の美人女将が「投稿ハンター」の一人として登場
。洒落た文章を寄せている。「二代目魁」にも触れているので、良い宣伝になっている
。ありがとう。
新宿、渋谷、品川で連続爆発。誰の仕業か。
20日は、中山競馬場で場外馬券を楽しむ。土、日のメインレースを当てて、すこぶ
るご機嫌である。
夏みかんは酸っぱいけれど、全部食べさせてもらった。
1月17日(木) 公的資金投入、決定!?
朝から「加藤紘一が重大決意」の噂が永田町に広がる。
週の始めの日記で「加藤は殺される!」と書いた。新聞記者の間では「死期が近づい
た」と感じたようだが、あの「加藤の乱」の結末を思い浮かべれば、彼に「決断」なん
て期待することが無理というもの。殺される前に、政治的撤退を計り、体制を立て直す
なんてことを、考えることが出来ないのだろう。
派閥の会合で「責任を感じる」と話しただけ。無責任というか、優柔不断というか、
愛想が尽きる。このままでは、佐藤さんは逮捕され、本人も……と言うことにもなるか
も……。前回の献金疑惑を逃げ切った「自信」があるから、平気なのだろう。
一時、新党結成で密談?した民主党の菅さんも、加藤さんとは絶縁せざるを得ないだ
ろう。
たいとう診療所。ことし初めてのリハビリ。階段の上り下りが新しいメニューに入っ
た。頑張るぞ!
知り合いの情報通から電話。今泉さんが講演で「金融危機、無用な混乱を起こさせな
い」と話したという。今や2月、3月の金融危機は常識化しつつあるが、金融庁と日銀
の対立はまだ公的資金投入で対立している。
この今泉さんの講演は「公的資金投入しますからネ」というサインだ、と情報通。日
銀の要求に応える方向を徐々に見せている、と考えるべきだろう。
いずれしても、当面の株価動向を注目する必要がある。株価が下がり続けると、ペイ
オフ凍結解除は出来なくなる。そうなれば……。
公的資金はこれまで何度か投入され、そして、どこかに消えていった。果たして、国
民は度重なる投入に納得するのか。所得税の課税最低限の引き下げの話より、公的資金
投入が差し迫った重大な選択だろう。
週刊文春の「大新聞経済部記者グループ 上層部が書かせてくれない2月経済危機全
真相」が話題。二代目魁の掲示板にも熱心な「書き込み」があり「毎日新聞がダイエー
支援でスクープしたのは三和のリークだ、という記述があるが、編集長は何か、ご存じ
か?」と言った質問。
何も知らない。何か知っていたとしても、明かせない。ニュースソースは秘匿するも
のだ。
ただ、ダイエー報道では、毎日は一歩も二歩もリードしている。明日(18日)の朝
刊でも、ダイエーものが、載るらしい。
午後、来客1組。「NHK出版生活人新書で名馬物語のようなものを書かないか」と
いうお誘い。「僕のようなものでも良いのか?」と一度は辞退したが、たっての勧め。
出来るかどうか、考えて見ることにする。
午後3時から秋葉原を散策。3時間歩いたら、少し疲れる。
このところ、幾分、日程が詰まっているので……9時過ぎに就寝。
<何だか分からない今日の名文句>
決断しない万年首相候補
決断するフリをする現首相
1月16日(水) ありがとう。応募数412
掲示板が盛況である。一日に20近い「書き込み」がある。うれしいじゃないか。
一時は常連ばかりで、ハイレベルな論陣に恐れをなしている人も多いのでは、とちょ
っぴり心配していたが、どうしてどうして、ここ一週間、顔ぶれが一気に膨らんだ。「
顔が見える掲示板」。
朝、前日(15日)締め切った「2002年大予想」の応募総数が分かった。412
人。驚いた。
ダービー、有馬記念の予想の類は100程度だから、約4倍。こんなに応募してくれ
るなんて……ありがとう。Jrは「全問的中者はかなり出るのではないか」という。そ
うなると、表彰状を作る費用がかさむ。「もちろん、全問不的中者も出るだろう」と言
うから、特別賞も用意しなければならない。うれしい悲鳴。
もし、大部数の毎日新聞がこの種の「予想式世論調査」をしたら、話題になるだろう
。
(予想の傾向は今月末に掲載するつもり。予想の結果は大晦日)
午前中、東京専売病院。血圧126−70。すこぶる順調。
麻布十番まで歩いて、JRAの六本木事務所で終日取材。
夕方、数年前、大阪に転勤した友人が出張で東京に来たので仲間4人と芝の中華料理
。転勤の折り、ネクタイを餞別に贈ったが、彼、そのネクタイを締めていた。感激であ
る。
彼「食糧、エネルギー、防衛が国家の柱」と考える、まっとうな人物で、東京に
いた時は何回も議論になった。いつも真正面から議論を展開するので、逃げ場がなくな
って困ったこともあった。
話題は東京の一極集中の話から、得意のエネルギーの話まで。
(1)大阪駅の裏に「ヨドバシ」が出店して、あのあたりの人の流れが急変した。
(2)東京新宿に似た「無法地帯的現象」が大阪南に起こりつつある
(3)××電力は○○原子力発電所の住民投票で、建設反対派が勝って内心、喜んで
いるハズ。もし、促進派が勝ったら、××電力は約束通り建設して、新たに2000億
円の負債を抱えなければならなかった。今は、電力会社が実は「隠れた反対派」なのだ
。
と、言ったような話。おもしろい話が、いっぱいあったが、披露出来ないモノもある
。
浅草観音裏の「ひまわり」でカラオケ。大阪もの、オンパレードで盛り上がる。
午後11時、仕事場の200メートル先の神田川沿いのホテルに送った。
<何だか分からない今日の名文句>
本音と建て前
1月15日(火) エッ、景気がいい?
朝、携帯がなくなり、また一騒動。友人から借りた携帯で、我が携帯に電話すると、
確かにファンファーレが鳴る。「どこにあるのか分からないが、とにかく、この部屋に
ある」と安堵する。
命の次に大事な携帯、といった感じ。電話帳が携帯にあるから、なくなると立ち往生
してしまう。道具に翻弄される己。ああ、情けない。
若干の電話取材をして「おけら街道」を書く。
昼、来客1組。この日から三和、東海、東洋信託がUFJ銀行、UFJ信託銀行に名
前が変わった。当然、店舗数が激減するのでビル管理の仕事が減る、といった愚痴を聞
く。「冷え込んでいます」というのが、友人の感想。
午後3時。歩いて40分。診療所仲間のお見舞いに行く。40度出て手が痙攣した
、という。風邪から来た体調不調だと思うが心配である。手すりのない階段しかないマ
ンションなどで、彼の住む2階に上がれず、彼がベランダに出て、道路に立つ当方と話
をする。近くの人は、妙な光景を黙って見ている。
夜、赤坂で会合2件。「赤坂の夜」なんて、久しぶり。芸者さんに酌をして貰うことな
んて、まずない。
空車のタクシーが道路を占領している。景気がいいのか、悪いのか。街はザワザワし
ている。
静かなところが良い、と11時過ぎ、新橋のスナックによる。現役の芸者さんがやる
この店。片隅に「流通産業一人勝ち」といわれる某社の社長さんが、静かにグラスをあ
げている。
女将のママにことしの景気を問えば「花柳界はどこも去年より、大分良い」との話。
本当かしら。
多分、勝ち組と負け組がハッキリしつつあるのかも知れない。
日付けが代わり、1時半を過ぎて帰宅。この日記を書くのが、億劫だった。
<何だか分からない今日の名文句>
ああ、富の偏在!
1月14日(月) 加藤紘一は消される?
中国の司法当局が民主活動家・王策氏を釈放した。2月、ブッシュ大統領が訪中する
ので、人権侵害を指摘されるのを避けるための作戦か。
パキスタンのムシャラク大統領はイスラム神学校を政府登録制にする、と言い明かした
。これもアメリカに最大限の配慮をしたものだ。
ある国は他国を考慮して「国家反逆的な人物」を釈放し、また、ある国は他国の意図
で「自由」を制限する。
表面的にアメリカの言い分が何でも通っているかのように思うのだが、冷静に見れば
、むしろ「アメリカ一極主義」は崩壊しつつある、と見るべきだろう。だから、外交的
な強がりを見せる。少なくても「ドル一極支配」には、限界が出ている、と思う。
小泉政権は、相変わらず「アメリカ一辺倒」を続けるようだが、果たして、これで良
いのか。
それにしても、70%を超える小泉政権の支持率。異常だ。多分、テレビに向かって
、自分の言葉でモノを言っているのが支持を受けているのだろう。
でも、その理由は当初とは幾分、変わってるようだ。最近は支持する理由が「人柄」
になっている。「改革」ではないらしい。一度は支持した人が今更「支持しない」なん
て言えず「政策ははっきりしないが、取りあえず人柄が良い」と言い出している。人気
投票そのもの?
いまは政策を評価出来ない雰囲気である。
少しはポスト小泉の可能性が残されていた加藤紘一は、事務所の脱税発覚して、身動
きが出来ない。すでに国税当局の調査に対して、資金を援助した地元の建設会社は「公
共事業を貰うため」と告白している。もしかして贈収賄事件になるかも……。ついに加
藤も消された!と評判である。
成人の日。晴れ着は僅か。
15日「2代目魁」の「2002年大予想」は締め切り。俳句欄の「初句会」も締め
切り。滑りこみで、参加してくれ。
正月気分も終わる。
<何だか分からない今日の名文句>
盟友も、親友もいない永田町
1月13日(日)「お願いします!」と渡すティッシュ
金曜日(11日)。久々に「有希in San Francisco」が更新。有希
、元気だったんだ。新婚家庭の寝室では「ざくろ」を飾るとか。面白い話ばかりだ。
夕方、社会部新年部会。アフガン取材から帰った記者さんの報告。当地の民族衣装を
まとった彼、疲れも見せず「帰ってきたら仕事山積」を喜ぶ?当地の女性は実に美しい
ことを力説する。とにかく元気だ。
アフガンのことで心配なのは、地雷除去である。東京ドームの面積に、どこに埋めて
あるか分からないが、2つの地雷が放置されている計算。20年に亘る内戦の傷は当分
、続く。地雷除去には、日本も力を負担すべきかも知れない。
そしてビンラディンの消息。今ごろになって、米軍は国外逃亡を認めている。あの
頃、WEB情報が「脱出」と報じたのが正しかったのか。もしかすると「整形手術」で
顔を変えた、という情報も事実かも知れない。
ビンラディンが捕まらないで、4000人近い生命が犠牲になったことをブッシュは
どう説明するんだろう。
部会で隣り合わせた編集委員氏が面白いことを話してくれた。「何故『お願いします
』と言って、ティッシュを渡すのか?」。
確かに、駅前でティッシュ配りをしている若者は必ず「お願いします」と言って、配
っている。モノをプレゼントするのに「お願いします」はいささか妙だ。早く配ってし
まうために、「お願い」するのだが、やはり妙だ。
北京特派員だった編集委員氏が言うには「中国人は駅の周りを何度も歩き、ティッシ
ュを集めている。あんな柔らかい上質な鼻紙は中国では今でも、貴重品だ」という。
贅沢なティッシュを配っているのはローン会社ばかり。景気がいいのは「金貸し」ば
かりーーの証明か。「金貸し」の文化が、価値観を麻痺させている。
土日は野暮用。
隙間を縫って13日の午後は府中。惨敗。帰りに教会。妙な取り合わせだが、ギャン
ブルに「悪」を感じないから仕方ない。
親友の薦めで三浦綾子さんの「天の梯子」「母」を読む。三浦さんは厳しく、優しい
カソリック。読むうちに「神との対話」について、僕なりの解釈が少し整理出来たよう
な気もするが、どうだろう。
<何だか分からない今日の名文句>
人は地上の居留者?
1月10日(木) カソリック浅草教会
朝、来客1組。深刻な金融危機について話す。「××銀行でも安心出来ない」という
話には、ビックリさせられる。2月、3月は日本国の剣が峰?
中曽根康弘事務所が、昨年11月22日、ソウルで行われた日韓協力委員会で上坂冬
子さんが講演した内容を送ってきた。上坂さんの話の趣旨は「韓国人は気性が烈しい、
と思いがちだが、そうでもない。我々は、韓国人の人間としての配慮、いたわりを忘れ
ている」。
中曽根さんは、時々、この種の情報を送ってくれる。
彼、2002年を日韓の年と考えている。彼の新国家主義とどういう関係になるのか。
午後、たいとう診療所に年賀に行くが、今井院長をはじめ全員、往診、訪問リハビリ
で留守。人手が足りないけど、正月から頑張っている。
帰りに近くのカソリック浅草教会で「お祈り」をする。一ヶ月前になくなった人の冥
福を祈る。
僕の場合「お祈り」というよりは、自分の気持ちを落ち着かせる「空間」として教会
を利用させてもらっている。いつも、座っていると、お袋のことを思い出す。教会は母
との再会の場。
この浅草教会は東京に現存する中では、もっとも古い歴史を持っている。1613年
、江戸幕府が開かれた直後、スペイン人のルイス・ソテロ神父が浅草に布教して、小さ
な聖堂とライ病院を作った。しかし、1ヶ月ほどで、キリシタンは捕らえられ、鳥越川
ぞいの鳥越刑場で27人が殉教している。
鳥越川から殉教者の血は大川に流れた。その鳥越刑場あとに浅草教会が作られた。
今、鳥越殉教者記念碑の石の堀直し、移設をしていている最中らしいが、新しい説明
看板が出来ていた。
夕刊特集のデスクから「月曜日の14日が休日なので、ここだけの話を少し早く出稿
して欲しい」との注文。急いで書く。
昨年10月18日の日記でスクープ?した「ライジングプロダクション事件の標的・
政治家K」にやっと、国税局の手が入る。加藤紘一の金庫番、佐藤三郎氏が強制調査を
受けた。権力者の加藤さんは、すべて三郎さんの仕業にしてしまうのだろうが、神は許
さない。
実はこの事件に深く関係する面々に、もうひとりの「政治家K」がいる。そちらの「
K」はどうなるのか。
二代目魁の「2002年大予想」は15日、締め切り。まだの方は、ふるって参加し
て欲しい。
掲示板について、知り合いが年賀状の中で「広がりがなくなった気がする」との指摘
をしてきた。そうだろうか。
テーマを掘り下げて、議論は活発だ。参加者も増えているのだが……人によっては、
少々、堅苦しい側面もあるのかも知れない。
「知的な部分」が多くて「痴的な部分」が少ないのだろう。たまには「痴的」で、お
願いしたい。
それよりも「広がりがない」とお思いの方こそ、書き込みに参加願いたい。
<何だか分からない今日の名文句>
権力者よ、神に許しを願え!
1月9日(水) サンデーの「悪業」
朝、届いた出版局のトップからの年賀状。「サンデー毎日の部数がやっと下げ止まっ
た」とある。ホッとした。
いくら出版不況でも、この数年、サンデーの売れ行きダウンは桁外れだった。実は存
続すら心配されていた。
良かった。本当に良かった。
ちょうど10年前の今日、脳卒中で倒れた僕を見舞いに来た当時の出版局長が「無念
だろうが、編集長を辞めて貰うしかない」と解任通告した。覚悟していたが、無念だっ
た。
倒れる前、いくつかの「企て」をしていた。
一つは関西支局に次いで「新宿・歌舞伎町支局」を開設しようと思っていた。巨大な
闇の街・新宿から、闇の裏側を発信する。闇が支配する現代を書くのが週刊誌の使命、
と考えていた。「闇を暴くのはサンデー毎日」で売りまくろうと考えていた。(編集長
解任後「歌舞伎町支局」どころか「関西支局」も閉鎖された)。
一つは「グリコ森永事件の犯人」追跡。気鋭の部員が「犯人である可能性は大」とい
う人物の情報を持ってきていた。詳しく聞くと具体的で「これは行ける!」。50万円
の取材費を渡し「誰にも分からないように」と隠密取材を命じていた。(倒れた直後、
頭が混乱していたが、この件だけは頭に残っていた。その後、取材した部員の一人が退
社した。それと関係があるのかどうか、分からないが、新潮社の雑誌に我々が追ってい
た人物のことが「グリ森の犯人」として報じられた。ライターは「一橋文哉さん」。こ
のペンネーム「一橋にある新聞社(つまり毎日新聞)のブン屋さん」と言う意味ではな
いか、という噂も流れたが、真相は分からない)
心配なこともあった。皇室関連の記事で、右翼の人が抗議にこられていた。「ピスト
ルだって持っているんだ」と脅されていた。僕の留守に彼らが編集部にやってきたら…
…。心配だった。(僕の元に抗議に来ていた人物は、その後、金丸信さんを狙撃して逮
捕された。本当にピストルを持っていたのにはびっくりした)
当時、部数も上向きで、編集長としては油が乗り始めたころだから、やはり無念だっ
た。それより、退院後「部数が減り始めたのは、お前が倒れてしまったからだ」と言わ
れるのが辛かった。
だから、サンデー毎日には、僕なりに愛着を持っている。部数が下げ止まりしたのは
実にうれしい。確かに記事がおもしろくなっている部分もある。
昼、そのサンデーに「JRAの悪口」が載っている、と言うので、たまちゃんにコピ
ーを送って貰う。
「元騎手田原成貴の独占告白『私が覚醒剤所持と引き替えに告発したかったJRAの
悪業』」。トップ記事である。
読むうちに情けなくなった。はっきり言って、ひどい内容である。「ひどい」という
のは「悪業」がひどいのではない。記事の質がひどいのだ。
田原君の言い分だけで「覚醒剤使用はJRAに対する抗議」と決めつけている。田原
君が被害者のようである。
その田原君の言い分というのが支離滅裂。理屈が合わないことばかりである。
この言い分だけで「JRAの悪業」なんて書くなんて……この記事には、事実を客観
的に見るための取材活動がまるでない。インタビューが取れた!ということだけで、無
理矢理「ストーリー」を作っている。こんな原稿をデスクが通すのか。もし、もっと取
材すれば、構造的なJRAの「悪」をキャッチすることも可能なのに。
彼が逮捕される前、僕はJRAの人に「覚醒剤使用の疑いが極めて濃厚で、早く対応
しなければいけないのでは」とアドバイスしていた。この日記でも覚醒剤で逮捕される
前に「クスリ疑惑」を書いている。この世界では、かなりの人が、彼のクスリのことを
知っており「JRAへの抗議」でクスリを始めた、なんてものではない。
もし、JRAに落ち度があるなら、覚醒剤使用濃厚な調教師を放置したことである。
他人のことを「悪業」と書く時には、それなりの覚悟がいる。JRAにも恥部はある
。あるいは世間から「悪業」と言われることを隠しているかも知れない。それは分か
らない。
しかし、今回は、JRAの「悪業」ではない。田原君の「言い訳の悪業」ではないの
か。先輩面して恐縮だが、この問題に限って「サンデーは三流週刊誌」と言われても仕
方がない。
僕も同じような間違いをしたことが何度もある。だから偉そうには言えないが、週刊誌
は1に「正義」、2に「売り上げ」、3に「それなりの品位」……。
後輩の諸君!
手抜き取材は駄目だよ。世の中には「隠された、驚くべき悪業」があるんだから。
頑張れ!サンデー!
<何だか分からない今日の名文句>
筆、走り、筆、押さえる
1月8日(火) へ・かスクープ
それに正月の新聞、雑誌に一括して目を通す。
ご存知「元旦スクープの読売」。今年は「安保基本法制定へ」。本当かしら。
夕刊フジで花ちゃん(花田紀凱・元週刊文春編集長さん)が「へ・かスクープ」と冷
やかしている。何でも「……へ」「……か」は東京スポーツ流の特ダネ。それと同じじ
ゃないか、とからかっている。
いずれにしても、大分、先のこと。この記事を根拠に、社民党の土井さんと民主党の
横路さんが「安保基本法反対で団結」するらしい。
活躍の場がなくなった、横路さんの苦肉の策。「不戦」を軽々しく「結婚の根拠」に
するな。
基本法なんて作らなくても、好戦派は見せかけの世論を背景に、実体面で軍拡を進め
ている。
その実体を洗い出すことが先決である。政党は独自の情報収集能力を持たなければ、
存在価値がない。土井さんにも横路さんにも、その認識が全くない。
自治労から資金援助を得たのなら、こんなところにカネを使えばよかったのに。
むしろ、5日の毎日新聞の「公的資金再注入 速水日銀総裁が主張」の方が、今の指
導者の実態を良く表している。昨年11月の経済財政諮問会議の非公開の議事概要を手
に入れて、書いているようだが、日銀と政府の対立はすさまじいモノがある。
この時、柳沢金融相が「大手行以外の金融機関は3月までに20〜30整理する」と
発言している。
1ヶ月前の情報だが、隠されたものにはニュースがある。「へ・かスクープ」より、
価値があるように思う。(若干の身びいき?)
総じて、正月のマスコミはそれほど、元気が良かったとは言い難い。テレビもおもし
ろくないし。
一日中、日本列島、突風に次ぐ突風。野暮用で行った先で立ち往生。車椅子を使わし
て貰う。
<何だか分からない今日の名文句>
明日を見るより昨日を見ろ
1月7日(月) 民間の犠牲者3767人
終日、野暮用。
その間、携帯の電話、ひっきりなし。仕事始まりは携帯から。
留守電にすると、近況を知らせる演歌歌手、新年社会部会の知らせ等々。すでに亡く
なった方に年賀状をお出しした欠礼を指摘する電話には、ただただ汗をかく。
米週刊誌「タイム」がアフガニスタンでの米国の空爆で犠牲になった民間人は376
7人と報道した。米国防総省は「歴史的に最も民間人が少ない戦争」と話しているが、
そんな問題ではない。
テロの首謀者を裁判に掛ける目的で始めた行為で、4000人近くの民間人の命が奪
われる。共産主義者を探し出す目的で行われたベトナム戦争で200万人の命が奪われ
たのと何ら変わらない。
しかも、首謀者ビンラディンは依然として潜伏?している。
アメリカは間違っている。アメリカの一国支配は限界に来ている。ドル一極支配も限
界だ。
世界は多民族、多文化がそれぞれの価値を認め合う「共生」「共創」の方向に進む。
それは歴史的な必然ではないのか。
その視点を無視して「米追随だけが唯一の価値観」と信ずる日本。「テロ集団を支援
するのと同じ」とは言わないが、これもやはり犯罪的行為になりかねない。
求められるのは「アメリカ追随外交の改革」ではないのだろうか。
ことし最初の「ここだけの話」のゲラ直し。働く女性が安心して子供が生める「環境
」が出来ないと、不景気は続く、と言ったような持論を書いた。字数が足りず、何とな
くパンチに欠けている。アレも書きたい、コレも書きたい、と欲張ったのが仇になった
。
と、言ってゲラで直せるものではなく、そのままにした。
かつての愛馬・バブルカムフェローの初めての産駒。あまり目立った子供に恵まれて
いないが、京都競馬4レースの新馬戦で、バブルに良く似た馬が勝ちあがった。エイプ
ルマインド。末足、お見事。と、言って一生懸命に走っている感じもしない。これ、大
物のような気もする。エイプルマインド、お忘れなきよう。
次の5レースの新馬戦では、バブルの子は離れた15着、16着。どうもバブルの種
牡馬生活は多難のようだ。
で、この日の馬券成績は東京のメインを取って、京都のメインを取って、実に好調。
こんな日があってもいいだろう。
<何だか分からない今日の名文句>
大国を牽制する小国
1月6日(日) それぞれの正月
前夜(5日夜)、金杯の惨敗をすっかり忘れて、親しい仲間と気持ち良く、気持ち良
く、飲み明かした。親友が、麻痺している当方の右手が「凍えている」?と一時間以上
もマッサージしてくれた。彼「この手、絶対に治る!」を連発、かなり酔っていたのだ
ろう。
こちらも幾分、酩酊したのか、居酒屋から「みのもんた」に電話をして「今月
中に飲もう!」と約束させる。昼に霰が降ったので、気分が高揚しているのか……やっ
ぱり、金杯が来ると、みんな子供みたいな気分になる。
6日は朝早く、日本橋・三越の「吉書展」を出かけた。知り合いの高橋温さんが出品
している。高橋さんは、某信託銀行の社長だが、非常に気さくな方で、金融業界が忌み
嫌う?ハズの新聞記者と平たく付き合ってくれる。まあ「遊び仲間」という間柄である
。
これまで文墨の趣味があるとは知らなかったが、暮れに会った時「良かったら見てく
れ」と言われ、案内状を貰った。
彼の作品「千年凛然」。ある思いが込められていて、展示の後、小渕元首相の未亡人
に贈られることになっている。
この「吉書展」、ことしで37回目。各界のトップがそろって出品している。会場で
、10数年ぶりに深谷隆司さんに会う。彼も作品を出している。
先方は「いや、しばらく」と言ったが、必死で記憶の糸を手繰っている様子。
知人から、福井県の某所に彼が良く使う旅館があると聞いたので、話題を「蟹がうま
い老舗旅館」にした。傍らの奥さんが「××さん(経営者か、仲居さんか分からないが
)と親しくなったので」を熱心に説明してくれる。確かに細やかな良い旅館だ。
そんな話をしている内に当方のことを思い出したか、彼「確かに良い旅館だが、めち
ゃめちゃ(料金が)高いぞ」といつもの調子になった。
政治向きの話はせずに分かれたが、落選中の彼、顔がピカピカしているのが印象的だ
った。
東京駅で作詞家の星野哲郎さんとばったり。彼「伊東で一人で6日間過ごしたが、淋
しかった。8年前に女房をなくして……」と話す。少しだが、顔がこけて見える。
人々に色々な正月があったんだ。
この正月。祈ることを学んだ。
僕は全くの無宗教主義者。万物に命があり、死がある。しかし、自然には「限界=死
」がない。それは創造主というか、絶対価値というか、「神」(太陽のようなもの)が
存在する証拠だ、と思っている。だから神を信じている。
でも、宗教団体は不可欠とは思っていない。性に会わない。宗教団体の歴史は戦の歴
史でもある。神は存在するが、団体としての宗教はいらない、というのが、僕の考え方
だった。
だから、特別のこと以外、神社仏閣、もちろん、キリスト教の教会を訪れることはな
かった。
ところが、とあることが合って、カソリックの教会に足を踏み入れた。足を踏み入れ
なかればならない「縁」が生じた。ただ、それだけなのだが、教会に座っていると、何
故か、清々しい気分になるのだ。
誰もいない教会で、一人で座っていると、亡くなった母親との思い出が次々に頭をよ
ぎる。不思議だ。30年以上も前に亡くなった従兄弟のことを突然、思い出したりする
。隅田川で凧上げをした時のことを鮮明に思い出した。その時の従兄弟のセリフまで思
い出した。
何故か、落ち着き、もっともっといたい気持ちになる。
不思議だ。気がつくと、祈っている。僕の勝手な言葉だけれど、祈っている。
何故だろう。
「死」を明確に意識する年齢になったということか。
あるいは「戦争の時代」に入りそうな雰囲気に、いらだちを感じ、神に「不戦」を誓
たい気分なのか。落ち着いた心境になりたいのか。
いままでと、ちょっと違った正月である。
<何だか分からない今日の名文句>
神は「不戦」
12月31日(月)から元旦 深夜のミサ
31日、旅先の空は雲一つない。こんなに快適な朝はない。
海辺に小鳥が一羽、波をじっと見ている。「魚は飛べない。鳥は潜れない。人間は…
…」なんて思ったりする。人間は万能でありそうで、実は全く何も出来ない。飛べない
。潜れない。でも、力を合わせれば飛ぶことも出来る。
でも、往々にして人間は他人に非協力である。
いつも、年の瀬になると、こんなたわいもない、ちょっぴり哲学的な思いに駆られる
。
同時多発テロが起こった時「もしかしたら、それより先にロシア・オウム真理教グ
ループのテロが先行したかもしれない」と思った。大々的に報じられた訳ではないが
、このグループは2000年7月、東京・青森で爆弾テロを敢行し、麻原の釈放と70
00万ドルを要求しようとしていた。
日本に来たとき、入国管理事務所が入国を拒否。ロシア当局が摘発して、グループは
逮捕された。
事件の黒幕は……同時テロより一年以上も前にオウムのテロが現実になった可能性が
ある。
その一方で、未だに、オウムの信者は地域から追われている。もはや、彼らは「福祉
の対象」だが、地域住民はただただ気嫌いするだけで、解決法が見つからない。
2002年、麻原の裁判を終えて貰いたい。裁判が長引けば長引くほど、悲劇が続く
。判決が出れば、事情は変わる。
一部の弁護士は公然と「引き延ばし」を主張している。それで良いのか?
2002年、色々な願いがある。だが、僕は、あえて皆さんに「オウムを風化させな
い姿勢」を求めたい。
大晦日。不景気だが、新しい年を迎える意気込みが交差している。豆電球の電飾ツリ
ーが綺麗だ。
2002年1月1日午前0時、僕は、柄にもなく、旅先の教会で、新年のミサに参加
した。
アメリカの利己的すぎる主張を止めさせる思いを胸に。
<何だか分からない今日の名文句>
忘却の罪、非協力の罪