編集長ヘッドライン日記 バックナンバー
2005.12月

12月27日(火) 大掃除→歳の市→忘年会 歳を取る

 仕事場の大掃除。一年間の雑誌類を整理した。その数、300冊を越える。必要なものはコピーして残すので、 朝4時から午後3時まで掛かった。

 午後、両国橋西の堀不動(東京・中央区東日本橋2−6−8)の歳の市。 目黒、目白と並ぶ江戸3大不動。大変な人出だ。

 「水島」に頼んでおいた「注連縄に裏白の玄関飾り」を受け取る。8000円強。歳神を玄関に導く目印だから、大きい方が良い。

 やげん堀は川崎大師の東京別院。講談発祥の地。毎月28日に「講談の会」が行われる。 12月27,28,29日の納めの不動は東京の風物詩。衣類中心の屋台が並ぶ。パンツ2枚、買う。

 スポニチから「原稿はまだか?」という電話。デスクから「今週はない」と言われていたので書いてない。 連絡不徹底。で、止むを得ず休載。

 夕方、銀座中学前の「久原」で毎日新聞夕刊競馬面「うま馬ランド」の忘年会。今年は北村社長も参加した。 新聞協会長に就任して、超多忙だが「うま仲間」と話していると、癒されるのか。ご機嫌である。

 北村さんは10年前、夕刊に競馬欄を作ったときの担当局次長。トントンと出世して、 編集局長、主筆 社長。その上、新聞協会長になった。

 彼の場合「人柄勝ち」である。

 コラムを書いている鈴木淑子さんも参加した。皆に浅田次郎さんの集英社文庫「サイマー!」をプレゼントする。 サイマーとは中国語で賽馬。競馬のことである。

 「人世同様、済んでしまったレースに“イフ”はない」と浅田さん、このエッセイで名文句を残している。 淑子さん、この本の解説を書いているのだ。読んでみると、彼女の筆運びも、かなり達者になった。

 気になっていた「ひまわり」の3万円の飲み代、借金になっている。帰りに届けると、今日は普通どおり営業中。 女将さんは、同伴出勤で、会えなかったが相変わらずの盛況。安心した。

 仕事場に帰ってから、週刊文春の合併号を読む。「中国情報機関の脅迫に『国を売ることは出来ない』と 首を吊った上海総領事館領事」は大スクープ。

 気になっている「女子フィギア」の中野友加里の「低すぎる点数」。理由が徐々に分かってきた。 スポンサーの意向で無理やり、中野の点数が抑えられた、ような疑い?

 多分、問題になるだろう。

 太平洋岸は快晴。日本海側は大雪。典型的な冬型の気圧配置。ヘッドライン日記。 今年は、この「27日の日記」で終わり。ご愛読、ありがとうございました。

 ああ、また、歳を取る。

<何だか分からない今日の名文句>

花は根に 鳥は古巣に帰れども

 人は若きにかえることなし
12月26日(月) 「第二幕のベルが鳴る」

 1947年から3年間に毎年270万人以上が生まれた。その「団塊の世代」が定年を迎える。毎日新聞社会面の来年の大型企画は 「第2幕のベルが鳴る〜団塊世代のあす」である。

 彼らは何を考え、どう動くのか、興味津々である。一流の記者が書く。

 出社すると、社会部長を中心にタイトルのデザインをどうするか、で喧々諤々。新聞の現場は良いものだ。

 ただ、僕としてはタイトル自体に不満を感じている。サブタイトルを付けなければ分かり難いものは、それだけで失格である。毎日新聞 は同人誌ではない。お金を頂く商品なのだ。分かり難いタイトルではカネは取れない。

 出来の良い週刊誌は、こんな悠長なタイトルは付けない。新聞だって同じだ。テレビだった同じだ。長たらしい情緒的なタイトルは嫌わ れる。短い、出来るだけ短いフレーズで核心を捉える。

 例えば、僕なら「団塊は生きる!」と付けるだろう。「平凡にして非凡」が受けるないようだ。

 「毎日新聞の今朝の“団塊は生きる!”凄い話だね」という会話はありえるが「毎日新聞の今朝の“第二幕のベルが鳴る〜団塊世代の あす”凄い話だね」なんて言わない。考えすぎたタイトルは苦戦する。

 タイトルは短く。これ、鉄則だゾ!(もちろん、好き嫌いはあるけど)小泉さんだって「短い言葉」で5年、もったんだから。

 もっとも、この企画、中身はしっかりするから、必ず、お客さんは集まる。楽しみだ。夕方、東京競馬記者クラブ総会。05年の記者 クラブ賞に「インパクトの池江厩舎」を選んだ。「一致団結の力」を評価した。総会の後、忘年会。某紙の本紙予想の人に、どうやって 大穴を取るのか、聞いてみた。

 そうそう、スポーツ紙では、東スポの渡辺記者がハーツクライを本命にして、話題を独占していた。

 その後、たまちゃんは、そのナベちゃんと一緒に消え、当方は浅草観音裏の「ひまわり」に借金を払いに行ったが、午後8時過ぎだとい うのに、灯りがなく、休み? 元気印の女将さん、大丈夫かな。

 仕事場に戻り情報整理。話題の女子フィギュア。僕が、一番素敵だと思った中野友加里の演技。不当に低い点が出たと、昨日の日記で 書いたが、僕と同じように思った人はたくさんいる。テレビの瞬間最高視聴率は、中野の演技の時間帯でダントツの42.9%(平均33 .7%)と判明した。うれしいじゃないか。やっぱり、彼女が一番、支持されていたのだ。

<何だか分からない今日の名文句>

新聞はもっとVIVIDに

12月25日(日) 中野友加里の点数

 少し寒さが和らいだ朝。午前8時からTBSラジオ。恒例の有馬記念の予想。インパクト狂奏曲の話をしてから、下手糞な予想。勝つの はインパクト。2着はハーツクライと予想した。

 中山競馬場に16万人。昼に入り、6Rと7Rで馬券を買う。意外なことに連勝。高校生が生産したユメロマンが2着に入り、うれしか った。

 8Rはパスして、有馬記念で勝負! パドック周辺で取材して「相手はやはりハーツクライしかない」と判断。「6−10−流し」の 3連単を買う。ヘンに自信があった。

 それが‥‥何と、ハーツクライがインパクトを負かしてしまったのだ。嗚呼、涙、嗚呼、大粒の涙。

 レースが終ってから、耳に入った話。あるカメラマンがハーツの調教師から「今度だけは勝ちたくない。日本中を敵に廻すから」と冗談 めかして話したという。何故、この話が入ってこなかったのか。無念。

 レース後、有馬観戦記を書く。(26日のスポニチの一面に出る予定。読んでくれ)

 JRAの打ち上げ慰労会に顔を出し、急いで帰宅。テレビでフィギアスケート全日本選手権を見る。オリンピックの出場選手が決まる。 村主はどうだろうか。中野はどうだろうか。村主はオトナの表現力。中野は安定感。浅田真央が出られないのなら、是非とも、この二人に 出てもらいたい。

 村主は完璧だった。中野も完璧だった(ように思う)。でも、中野の点数はあまりに低い。前日のSPが61.46も低いように思った が、フリーの114.20は低い。断じて低い。ブーイングが起こって当然だ。

 「名前」で点数がつくのか! もしかして、入力ミス?(冗談ですよ)

<何だか分からない今日の名文句>

競馬に「絶対」なし、審査に「絶対」なし

12月22日(木) 雨にも負けずインパクト

 大雪である。新潟・下越で大停電。65万所帯が被害を受ける。ことし、新潟に移住した知人の(オーバーでなく)安否が気になってオチオチできない。

 午後、JRAの記者室に顔を出す。競馬仲間(というか「松戸競輪仲間」と言うべきか)の原良馬さんはBSN新潟放送にナマ出演するため新潟に向かう途中、新幹線が 越後湯沢で止まってしまった。仕方なく、タクシーで新潟へ向かったようだが、4時間ぐらい掛かったらしい。

 新潟市内が停電で、ホテルに泊まっても凍えそうなので「放送が終ったら、タクシーで長岡に行く」という電話連絡。競馬記者諸君、改めて大雪にビックリする。有馬記念 は大丈夫かしら。

 週末、中山は雪が降る気配はないが、馬の輸送に支障はないのか。中京競馬はひょっとすると中止になるかも知れない。念のため、関係各所に現状を聞いてみた。無敗のイ ンパクトが「寒さに弱い」なんてことだったら大穴になるかも?

 有馬の25日はTBSラジオで予想? をしてから、中山に入り、観戦記を書く予定。とにかく、天候のハンディがなく、清々しい有馬が行われば良いのだが。

 特殊法人改革の閣議決定が24日に行われるので、若干の取材。別に記事にすることもないので、お勉強の範疇。

 この日、郵便物、多数。第六天榊神社の宮司から「歳末のご挨拶」、タレントの八波一起から、初めての著作「娘たちへ」。義弟から「ゆず」と「銀杏」。沖縄出身の宮山 から琉球新報社刊「沖縄戦新聞」。この本は、60年前の沖縄戦を検証した大作。僕に取っては貴重なクリスマスプレゼントになった。ありがとう。

 夜、麻布十番の裏通りで、競馬仲間と一杯。外に出ると、底冷え。右足が動かなくなった。

<何だか分からない今日の名文句>

越後の冬はクルシミマス

12月21日(水) 知的にして、律儀な豊

 有馬記念を前に、栗東トレセンは緊張し、混乱しているらしい。何しろ、無敗の4冠馬が生まれるかも知らないのだ。

 20日午後「インパクトの調教は22日」という情報が流れ、一時は、インパクト不安説も流れたようだったが 「22日大雪」ということで、調教は21日朝に行われた。

 武が乗って、82・6−67・6−53・4−39・2−11・8。6ハロンで3馬身先行した4歳500万下の フェイトトリックスを追いかけ、直線で追った。

 武は「直線も手前をキッチリ追えた。重圧はあるが、これだけの馬に乗れる喜びは大きい」と話したらしい。

 この栗東情報を聞いてから、外出。銀座で床屋。有楽町でラーメンを食べてから出社。 たまちゃんから、20日の毎日スポーツ大賞の表彰式の話を聞いた。

 年間6場所完全制覇の朝青龍がグランプリ。無敗の3冠馬インパクトの武豊が文化賞に輝いた。 実は、この表彰式、有馬記念を前にして、武に東京に来てもらうのは無理、と思った。 主催新聞社としては「是非とも参加して欲しい」ところだが「ファンのためにも、無理をしないで欲しい」 と伝えていた。もし、豊の体調に不安が出たら大変だ。

 でも、豊は「大丈夫です。行きます」と笑っていた。

 たまちゃん、競馬担当記者として、新幹線の品川駅で豊を迎えた。日程が厳しく、 大分、遅れた。豊、ホームを降りると、駆け出して、改札口にやって来た。律儀である。 とても有名人とも思えない仕草だった。たまちゃん、感動した。

 豊は会場で「競馬は特殊なスポーツだと思うが、騎手を選んでいただき、競馬界としても喜んでいる」 と話したらしい。豊は実に知的で、律儀なコメントではないか。

 夜、競馬仲間と「大作」で一杯。ちょっと酔っ払った、この友人は我が仕事場にやって来て、 イロイロと当方を説教をする。やれ「酒を飲め!」「糖尿病? 関係ない。水を飲んで歩けば治る」といった調子。愉快な男だ。

 帰り際に、力いっぱい、当方の右手を握る。痛いじゃないか。俺、片手しかないんだから。

 酔っ払いを帰してから、深夜まで執筆。歴史に残る有馬記念は25日のクリスマス。 それまで、原稿を書き上げ、ゆっくりと観戦するぞ!

<何だか分からない今日の名文句>

重責をはねのけるユタカ流知的基礎体力

12月20日(火) 小泉さん、またまた偽装?

 警視庁は耐震データ偽装事件で約120ヵ所を強制捜査。まさか、罰金50万円以下の建築基準法違反だけという訳では、これほど大規 模なものにはならないだろう。焦点は詐欺罪の立件。姉歯さん以外の関係者を一網打尽、と行きたいところ。「偽装しろ!」と言い続けれ ば強要罪にもなり得る。

 姉歯さんは自宅の強制捜査に同道した。事実上、連日の事情聴取で、逮捕されたような状態なのだろう。それにしても、姉歯さんは変人 である。頼まれもしないのに、勝手に偽造する。

 最近は、NHKに出て以来、まるで「建設業界の世直し男」みたいな顔つきで、まるで被害者のように振舞う。腹が立つ。

 「早く逮捕されたい」と言っている感じさえするが、それは彼の特異な人柄がさせるのか、あるいは、この事件の背後に○○組が絡んで いるので「心配だけら逮捕して」というなのか。それにしても、業界の体質と姉歯さんの特異性がマッチしてしまった怪事件。

 誰か、姉歯さんに似ている人物に出会ったような気がしてならなかったが‥‥そうだ、小泉さんによく似ている。と、言うより、小泉さ んは「姉歯」をさらに越えた超変人。

 偽装では姉歯以上だ。「07年度には、消費税を値上げすることはない」と言う。幾らなんでも‥‥消費税議論が本格的に始まるという のに‥‥ここへ来て「必要ない」と言う。07年には統一地方選、参院選。増税では選挙に勝てない、ということだが、それでは税の改革 は出来ない。国家財政は完全に破綻する。天災でなく、人災で破産する。いや、もう破産している。小泉内閣になってから、国の借金は増 え続いている。

 節約は必要だが、節約で立ち直すことは出来ない国家財政。このわかり切ったことを隠蔽する。ああ、小泉偽装内閣。

 夜、小泉さん、公邸で無派閥新人議員の忘年会。小泉さんに騙された面々? が嬉々として集まった。小泉派の旗上げ。無派閥という 小泉派の新人には、モチ代400万円。他の派閥の新人は300万円。(これ、自民党のお金)小泉流の金権統治。これも「無派閥」とい う偽装工作なのだ。

 寒さは一段落。年末の原稿ラッシュ。たまちゃんが忙しいので、手助けした関係で、身動きつかない。深夜、やっと「青い空 白い雲」 を書き上げる。それでも、時間を作って浅草でチャンチャンコを買う。夜中に原稿を書くから、精一杯、厚手なものにした。

<何だか分からない今日の名文句>

偽装変人は誰だろう

12月19日(月) 「雑誌世界」の総目次

 朝、かなり寒い。北陸では積雪2メートルとか。

 寒いからと言って、歩かないと、体重が増える。で、午後からアメ横まで歩く。ホームレスが販売する「THE BIG ISSUE」 を買った。2003年9月の創刊以来実売97万部。ホームレスに1億747万円の資金を提供した。

 寒さに負けず、街角に立つ販売員に、ポケットの飴をプレゼント。彼、大いに喜ぶ。

 アメ横で、ジャンボ宝くじを10枚。それにホカロンとユンケルを買う。

 仕事場に帰ると、、雑誌「世界」の別冊「総目次」が送られてきた。1946年から2005年の全目次を記録している。珍しい企画だ。

 「発刊の辞」も収録している。「我々は、眼前に迫る飢寒、窮乏、インフレーション他あらゆる苦難を克服しつつ、重きを負い遠きを 行く覚悟」と書いてある。そんな時代だったのか。

 第一号(1946年1月号)の目次には「美濃部達吉」「大内兵衛」「和辻哲郎」など執筆者の面々。

 「世界」は、長いこと、深い学識に支えられた評論で戦後史を切り拓いてきた雑誌。創刊以来60年、かなりの書き手がそろっている。 (僕も何度か書いたので総目次に載っていた)しかし、今の「世界」には、その迫力が半減してはいないか。少し心配。

 夜、かなり寒い。新潟は、どうだろうか。

<何だか分からない今日の名文句>

目次が時代を語る

12月18日(日) 姉歯事件の“本当の犯人”は?

 この冬、一番の寒波。12月に高知で雪が降るなんて‥‥ヨーロッパでも大雪。巨大ハリケーンといい、地震多発といい、世界的に異常 事態が続いている。

 東京も寒い。朝7時半にTBSラジオ。発覚後一ヶ月の耐震強度偽装事件について話した。

 姉歯さんの偽装以外のも、木村建設施工のホテルに構造計算の偽装があるのでは‥‥という情報もあって、事件はさらに拡大しそうな感 じである。(広島市の構造設計会社「塩見」は17日、記者会見して、木村建設が衆院国土交通委員会に提出した「積算対比表」に掲載さ れている31棟のホテルのうち、6棟の構造計算を受注したが「鉄筋量が少ないという指摘はあるが、バランスを取れば、耐震基準は満た している。複数の担当者が構造設計に携わっており、偽装はない」と話しているそうだが)

 それにしても、関係者がそろいもそろって「他人事」である。「何でも話す姉歯さん」も、それほど責任を痛感するようには見られない。 被害者顔である。

 誰が、この事件の真犯人なのか。

 ハッキリ言えば、関係者全員がグルである。阿吽の呼吸で「殺人ビル」を建てた。殺人が起こっても、その時は「犯人は地震」になるよ うにしている。地震が起こって、何人死んでも、建築士も、施工主も、マンションの売り手も「殺人容疑」を問われない。そんな仕組みで ある。

 影に隠れた「本当の犯人」もいる。「何でも民営化」の小泉さんが真犯人ではないのか。「民で出来るものは民に任せる」という彼の掛 け声は間違っている。

 「民に相応しいものは民に任せる」と言うのが、道理である。

 規制緩和すれば、何でも、民で出来る。それは当たり前だ。警察だって、刑務所だって民で出来る、ということだって言える。しかし、 警察が民で良いのか。そんなことになったら国はなくなる。

 建築の民間検査機関は「民」に相応しいのか。少なくても、検査を受ける側が、検査機関を選ぶなんて八百長である。そんな簡単な道理 が、再三、言うが、小泉さんには分らない。まる投げで、自分で判断しない。これが困る。

 アメリカの強い要望で、規制緩和の連続。何でも民。その出鱈目民営化が、偽装事件の真犯人なのだ。儲けることが善‥‥という市場原 理主義だけでは、秩序がなくなる。

 TBSラジオでは、そんな話をした。

 警視庁、千葉、神奈川県警の合同捜査本部は、週明け早々、建築基準法違反容疑で千葉県市川市の姉歯建築設計事務所や熊本県八代市 の木村建設などの家宅捜索に踏み切るだろう。

 捜索先は、コンサルタント会社総合経営研究所(東京都千代田区)や平成設計(同区)を含め全国五十カ所以上? 年末だというのに、 四百人規模の異例の態勢で捜査が進む。小泉さんは、この異常事態をどう見ているのだろうか。

<何だか分からない今日の名文句>

「儲け合い」はいつか「なすり合い」

12月15日(木) みのさん、手術を覚悟した

 朝、たいとう診療所。ことし最後のリハビリ。久しぶりに、畳の上の「起き上がり」の訓練をする。

 アメ横で「暮れの景気」を取材。日高屋で野菜タンメン。いつも満員だ。

 夕方、市川市の昭和セレモニー市川儀式典で“脳卒中仲間”の石井清隆さんの通夜。奥さんから「牧さんに励まされて、元気になったの に」と言われ、涙ぐんでしまった。

 7時半、赤坂のスパゲティ屋で、例の「赤坂もんた会」。みのもんたと記者仲間の会。担当記者ではないが、友人として出来る限り参加 するようにしている。「飲み食い」の費用は、みのもんた(あるいはTBS)の払いだから、いつも僕は土産を持っていくことにしている。 ご馳走になってばかりは困る。今回は、アメリカ土産の白ワインを持っていった。皆で、紅白の司会をお祝いして乾杯。

 寝る時間もない彼が、この忙しい時期に「もんた会」を開くには“魂胆”があると睨んで、通夜を早めに済まして、高速を飛ばしてきた が、勘が当たった。

 重大発表のその1。ギネスブックで「世界で一番話し続けるタレント」に認定された。朝3時間、昼2時間、夜1時間、テレビで話し続 ける人間(タレント)は彼意外いない。そうだろう。うれしいニュースだ。

 その2。実は、4月から彼、背中が痛くなって病院で見てもらった。その結果、脊椎管狭窄症と分ったのだ。そこで、みのさん、手術を 覚悟した。NHK紅白が終ったら、都内の病院に入院して、1月4日に手術を受ける。この間「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系) など生出演している3番組を1月14日まで休む。

 みのさんは「手術の成功率は7割と言われた。(場合によっては)迷惑を掛けない形で(番組出演の)幕引きをしなくてはいけない」と ポツリ。ちょっと、淋しそうに見えたが、この入院のタイミング、実に上手い。この「大晦日は紅白で全力疾走、明けて元旦入院」で、 紅白の視聴率は上がる。みのは、ここまで読んでいる。

 彼が話しているうちに、記者さん達は「原稿に書かなければ‥‥」と姿を消す。みのはメディアを上手に使う。

 でも、正直なところ、1944年生まれ同志、みのさんは、お前は「中高年の星」頑張ってくれ!

<何だか分からない今日の名文句>

倒れてもタダでは起きない

12月14日(水) 「オウム」を風化させないために

 朝、三田病院で大山ドクターの検診。血圧132−80。先ずは順調。 午前中にJRAに顔を出す。

 脳卒中患者仲間の中山競馬場の石井さんが7日、心停止で倒れた。 以前、石井さんが脳卒中で倒れた時「元気を出せ!」と励ました。 元気になってマイカーを運転するようになった、と聞き喜んでいたのに。

 副場長室で痙攣を起こし、救急車で船橋医療センターに運ばれたが、 容態は予断を許さなかった。大丈夫だろうか。ここ数日、心配していたのだが‥‥ 昼頃、帰らぬ人になってしまった。

 つい最近も、病院から「心臓を含め問題なし」と言われていたのに‥‥脳卒中の患者は 戦友のようなもの。その戦友が亡くなると、やるせない気持ちで、かなり落ち込む。

 午後、世田谷区の砧区民会館で「オウム真理教問題講演会」で講演。 世田谷区烏山に約130人のオウム信者(現アーレフ)が住み着いている。 この地では、相変わらず、オウムに対する不安が残っている。だから、 オウム対策の住民協議会まで作られている。

 そこで、世田谷区が主催して「オウムを風化させないための講演会」。 マスコミとして、初めにオウムを報道した、ということで、今回、僕が講師に選ばれてしまったが、 これまでオウムを主要テーマにした講演は断り続けていた。と言うのも、 坂本弁護士一家が惨殺されたことを思い出し、とても、まともに話せないのだ。 つい、涙ぐんでしまう。

 僕がオウム批判報道をしなければ、坂本さん一家の惨殺はなかったのではないか、 と思ったりすると、とても話せなくなる。

 今回は、世田谷区の方が熱心に「オウム事件を風化させないために」と勧められるので、 思い切って話すことになった。

 今、オウム(アーレフ)には信者が約1650人。それにロシアに約300人いる。 上裕さんを中心にする現実主義派と村岡達子さんを中心にした原理主義が、 一緒に生活している。相変わらず奇怪な生活ぶりである。

 特別指名手配の高橋克己、平田信、菊地直子は依然として逃亡している。 「走る爆弾娘」の菊地はタイに潜伏している、という説もあるが、不気味である。

 講演では、オウム事件で露呈した「日本人の知的起訴能力の衰退」が、もっと深刻になり、 訳の分らない犯罪が多発している現状をレポートした。

 国会では、この日、これぞ「訳の分らない耐震データ偽造事件」の証人喚問。 日本人は欲ボケして、ことの善悪が分らなくなった。「民営化!民営化!」 「儲けが善」「勝ち組になろう」の掛け声で、日本は今、まるで「ニセ宗教で天下を取ろう」 としたオウムのような錯乱状態になっているように思えるのだ。

<何だか分からない今日の名文句>

原因は「指導者の知的衰退」

12月13日(火) また大事件が‥‥

 朝早くから、三重県桑名市の大手サブコン「水谷建設」グループの補助金不正受給事件で、東京地検特捜部が一斉に家宅捜索を始めた らしい。

 これは大事件である。

 何故、愛知の事件を特捜部がやるのか。狙いは別のところにある。もちろん、政治家である。

 まだ、明らかに出来ないが、もしかすると、反小泉の大物の他に、小泉体制の要の一人が標的になるかも知れない。

 普通、年末に、この種の疑獄事件に着手することはないが、証拠隠滅を図られそうになったのだろう。いずれにしても、これは大事件 だ。

 朝、競馬ロマン大学を書き上げ、昼、サンデー毎日に顔を出し、世間話。帰りに大丸で、厚手のパジャマを購入。何しろ、夜明けは寒 い。

 夜は14日行われる世田谷区主催の「オウム真理教問題」の講演の準備。まだ、時差ぼけが治らない。

<何だか分からない今日の名文句>

越年捜査は大事件

12月12日(月) 「官舎でビラ」が有罪?

 久しぶりに出社。社会部と夕刊特集編集部に、アメリカ旅行の土産を持参する。上等かどうか、分らない白ワイン。リュックサックに入 れて、もって来たので、味わって飲んでくれ。

 この2週間に、社内で、何事か起こってはいないか、それとなく“取材”すると、社会部の大先輩が倒れた、という。有力関係会社の社 長を務めている毎日グループの“舵取り”である。それほど親しくはないが(昔は大井競馬場で一緒に遊んだこともあるが、彼が偉くなっ て、つい疎遠になっている)クールな人柄で、ただし、コトある時の豪腕? ぶり‥‥常々、敬服している。健康そのものだったハズにな のに。過労だったのか。ショックである。彼がいないと、困るだろう。どうか、容態が軽ければ良いのだが。

 日本列島、このところ、寒波襲来。気をつけなければならない。

 午後から、仕事場に帰り、この2週間の新聞、雑誌、週刊誌を片っ端から読む。大きな事件ばかりで、ただただビックリする。なんでこ うも、おかしな事件が立て続けに起こるのか。

 でも、大事件の陰に隠れ「歴史の転換期」を感じさせることもあった。これは、きっちり、記憶しておかねばならない。12月9日に出 された「防衛庁官舎へのビラ投函に関する判決」である。このことについて、若干、書いておきたい。

 東京都立川市の防衛庁官舎敷地内でイラク派遣反対のビラを配布し、住居侵入罪に問われた市民団体「立川自衛隊監視テント村」の大西 章寛(31)、高田幸美(31)、大洞俊之(47)の3被告に対する控訴審で、東京高裁は、9日、東京地裁八王子支部判決を破棄して、 罰金10〜20万円の逆転判決を言い渡した。

 3被告は昨年1月17日、自衛官やその家族らが住む立川市栄町の宿舎敷地内に立ち入り「自衛隊のイラク派兵反対」などと書かれたビ ラを各戸の新聞受けに入れた。さらに高田、大洞両被告は2月22日にも、同様のビラを同宿舎の各戸の新聞受けに投函した‥‥という 事件である。

 被告が、どういう人たちなのか、知らない。反戦活動家と言っても、イロイロな立場の人がいるから、どうのこうの言えない。だから、 一般的な日本人が起こした事件として、僕は判断した。立ち入りは違法だが、刑事罰を求めるような重大なことなのか、というのが、最初 に事件を知ったときの印象だった。

 昨年12月の地裁八王子支部の判決では、長谷川憲一裁判長が「居住者らのプライバシーを侵害する程度は低く、刑事罰に処するに値す る程度の違法性は認められない」として、3被告に無罪(求刑・懲役6月)を言い渡した。日常的に、エッチなビラが投函されている実情 を考えても、ごく妥当な判決と思っていた。

 この判決では、3被告の官舎立ち入り行為が、居住者や管理者の意思に反して行われていることなどから「住居侵入罪の構成要件に該当 する」とした。しかし「立ち入り自体は、居住者の日常生活にほとんど実害のない穏当なもの」と解釈した。それが普通の感覚だろう。

 考えておかねばならないのは、ビラの内容である。これは3被告の政治的意見である。ビラ投函は、その意見表明。つまり、3被告の行 為は「表現の自由」を規定した憲法21条で保障された政治的表現活動にあたる、と認識できる。長谷川裁判長は「無断で立ち入る商業的 宣伝ビラの投函が放置されていることから、政治的意見表明の3被告に刑事責任を問うのはおかしい」とまで言及した。これは反戦運動の 狙い撃ち、という認識もあったのかも知れない。

 ところが、高裁判決は全く違う。ビラが思想・信条などを他者に伝える貴重な手段であるという主張を否定して「表現の自由が重要な人 権であるとしても、権利者の承諾なく敷地に立ち入ってまで表現活動をして良いことにはならない」という立場を取った。

 どちらの判断が正しいのか。それぞれ、立場によって判断は分かれるだろう。記憶しておかねばならないのは、約1年たって、まったく 正反対の判決が出た、という事実である。

 警察はエッチな商業ビラを投げ入れを放置して、イラク派遣反対のビラを取り締まる。それは、国民の思想信条を調査して、取り締まる ことではないのか。司法が思想弾圧の道を開いた、ということにならないのか。

 ビラを配ろうとしただけで、目を付けられる。まるで第二次大戦のころの弾圧に、日本は近づいているのか。

 次々に起こる大事件に追われ、マスメディアも、この逆転判決を追っかけるところもないようだ。しかし、反対意見を抹殺する小泉翼賛 政治が、ついに、司法を劣化するまでになったのかも。

<何だか分からない今日の名文句>

特高を見るが如し

12月11日(日) 日記再開。先ずはアメリカ報告

 一ヶ月間、日記を閉じた。その最大の理由はアメリカ旅行。実は1991年12月4日、脳卒中に倒れて以来、飛行機に乗るのが、怖く なってしまった。

 健康な人でも、エコノミー症候群で血の廻りが悪くなる。脳卒中の後遺症に悩む僕に「長時間のフライトは危険だ」という人もいる。 で、発病以来、ハワイ、香港への比較的短距離のフライトしか出来なかった。

 しかし、このままでは、世界が分からないまま、モノを書き、最悪の場合、このまま世界を見ないうちに死んでしまう。そんなこと嫌だ。 絶対、嫌だ。

 で、脳卒中後15年目に入るのを機に、一大決心して「10時間飛行」に挑戦した。

 知人が仕事で渡米するので、これに便乗して、約10日間、アメリカ西海岸に向かった。行きが9時間強。帰りが11時間半のフライト。 何とか、アメリカ本土に上陸した。18年前、中曽根首相の訪米に同行して以来のアメリカ本土だった。

 ロス空港に着いたとき、恥ずかしながら、涙が出た。スチュワーデスが怪訝な顔をしたが、仕方ない。

 その昔、コンコルドにも乗った僕だが、一級身障者になって「言語障害だから、新聞記者に戻れない」とまで言語療法士に言われ、路頭 に迷ったあの頃。海外旅行なんて、とても考えられなかった。

 ありがとう。みんなの協力で「10時間フライト」が可能になった。(原稿の“書き溜め”に協力してくれたデスク陣に感謝する。“書 き溜め”のために、日記を書く時間がなくなり、ヘッドライン日記を中止したから、読者の皆さんにも、協力してもらったことになる。 ありがとう)

 で、簡単にアメリカ紀行報告。

 ロスは不動産バブルだった。サンディエゴは新しい地域つくりが進んでいた。メキシコ国境を渡ったが、結構、緊張していた。

 ラスベガスは誕生してから100年。眠らない街はさらに発展している。昨年は7回もやって来た美川憲一さんが、ことしは一度もやっ てこない。どうしたのだろう。その代り、中村玉緒さんは3回もやって来た。「ここだけの話だが」と知人がイロイロの教えてくれたが、 有名人の行状の数々は忘れることにした。

 帰国後の11日は、日本の新聞を必死に読む。それに若干の時差ぼけ。

<何だか分からない今日の名文句>

飛べば跳ぶ