16日昼下がり、JRA六本木事務所で経営委員会の開催を待っていたら、雑誌「BOSS」の関慎夫編集長から携帯。そこで、針木康雄さんの急逝を知った。
針木さんは以前から心臓に持病があって、今年1月末には胆嚢炎のため入院。先週末に退院して、自宅で療養していた。
ところが、14日未明、家人が気がつくと、眠るように昇天されていた。病名を付ければ「急性心不全」ということになるが……まさに眠るがごとき最後だった。80歳だった。
針木さんは早稲田大学文学部東洋哲学科中退。1957年財界研究所に入社、雑誌『財界』編集長、主幹を務めた。在籍26年。最大のヒットは「三越の岡田茂追及キャンペーン」だろう。
その後、独立。87年株式会社経営塾を設立、翌年『月刊BOSS』の前身となる『月刊経営塾』を創刊する。一方、経営評論家としてテレビ、新聞、雑誌などで活躍した。
多分、経済ジャーナリストとして「財界トップとの交友」は日本一。僕が知る限りでも、丸井の青井忠雄、伊藤園の本庄正則、ホリプロの堀威夫、リクルートの江副浩正、ユニデンの藤本秀朗、日本船舶振興会の笹川陽平、東京スポーツ新聞社の太刀川恒夫……政界でも、森元首相、扇千景、囲碁の武宮九段……ともかく、人脈が広い。
歯にきぬ着せぬ論評。もちろん、独立して雑誌を経営しているので、企業の協力をあおぐ。そこで、一部の評論家が「財界の寄生虫」と批判することもあった。
しかし、これは誤解だと思う。企業から広告料を貰っているというのなら日本経済新聞も、朝日も、毎日も「寄生虫」だ。
プロ野球界にも人脈が広く、財界人による巨人の応援団「パレス会」の世話人を務めたこともあった。
僕が、針木さんの存在を知ったのは、名作「危機管理の神様・松下幸之助」を読んでからである。
この針木さんの名作で「松下幸之助」を知った。松下電器の経営危機の時、250人の販売店の社長を熱海に集め、その窮状を聞き、松下は社長を自ら「営業本部長代理」を務めた。
トップとは、こういう存在なのか。これを、針木さんの本で、学んだ。
お会いしたことはなかったが、数年前、突然、お手紙をいただけ「毎日新聞の君のコラムのファンだ。俺の雑誌でも書いてくれ」と頼まれ、喜んで書かせて貰った。
短い付き合いだった。でも、勉強させて貰った。
ありがとうございました。針木先輩!
夕刊フジの『ザ・トップ あの深層は…』(2月11日付)が、絶筆なのか? 彼は「ソニーの凋落ぶり」を嘆いた。
最後の最後まで「経営の現場」を愛するジャーナリストだった。
通夜、告別式は近親者のみで行い4月6日午前11時からホテルオークラでお別れの会を開くらしい。
さて、JRAの経営委員会。「××反対の正論」を述べ、賛成を得られなかったが、爽やか。
夜、必死の執筆。夜中まで。
<何だか分からない今日の名文句>
人は財産 正論はチカラ