「尖閣」を見て「大局」を見失う

 日頃、多くの日本人は「尖閣諸島」のことを考えていたのか?
 「尖閣諸島」のことを本気で学んでいたのか? その勉強の下、この島が 「日本国有の領土」と確信して、多少の犠牲を払っても、場合によっては、地域紛争を覚悟して、他国を徹底的に論破する道を選んだのか?
 甚だ、疑問である。
 中国の多くの人々に対しても、同じ質問をすれば、曖昧な結果になるだろう。
 この領土問題は大きな課題である。が、例えば、沖縄で起こる様々な「主権制限」「人権侵害」の方が、もっともっと重大ということも言える。
 「尖閣諸島」は、多くの外交諸問題の一つであるが、「尖閣諸島」が全てではない。
 11日、野田政権は尖閣諸島を国有化した。
 もともと、日本人が所有していたから、日本の領土であることは明らか。何ら変わりはない。
 文句を言われる筋合はないが、中国を刺激したということも事実である。事態は変わった。
 それほど、両国に取っては、さほど大きなマイナスではないと思うが……大阪市は中国・上海市で15日から開催予定の「2012年上海観光祭」への出展を中止した。
 上海観光祭は今年で23回目を迎える中国最大級の観光イベント。大阪市の出展は昨年に続き2度目で、串カツなど大阪の名物料理や天神祭のちょうちんを飾り付けたパレードカーを走らせる予定だった。
 今後、この種の「日中両国が力を合わせる事業」が一時であれ、ストップするだろう。経済的、文化的損失はバカにならない。
 毎日新聞11日の夕刊コラム「牧太郎の大きな声では言えないが」では、中曽根・元首相の対中国外交の話を書いた。
 当時は今以上に両国は緊張していたが、胡総書記が「両国の間で少数の理解していない者がいるが、大局に影響はない」と応じざるを得なかった“秘密”を書いた。
 あの頃と比べ「日中の環境」は天と地ほど激変した。中国はロシアとの関係を修復。経済的にも、一部であれ、中国優位。中国は1年ごとに首相が代わる民主党政権を相手にしない。
 日本優位の環境の中でも、中国に向かう飛行機の中で、中国語を必死で勉強した中曽根首相を思い出して書いた。
 「尖閣諸島の国有化が最善の策」と考える偏狭なナショナリズムで良いのだろうか?
 毎日jp.TAP-iで、ぜひ、読んでくれ!
 「言いたいこと」と「言わねばならないこと」がある、と桐生悠々(明治、大正のジャーナリスト)は言った。区別がある、と言った。
 今回のコラム「大声」は「言わねばならない」範疇。覚悟して書いた。

<何だか分からない今日の名文句>
言わなばならないことを言うのは義務の履行
多くの場合、犠牲を伴う(悠々)