「引き算の美学」と言うけれど
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 9日、とある神社の大楠を見た帰り、社務所に洒落た「VACATION RENTAL」のビラが置いてあるのに気づいた。
 別荘一括貸しのことを「VACATION RENTAL」と呼ぶらしい。
 このビラ、「引き算の美学」というのがキャッチ?
 こじんまりとした温泉宿が立ち並ぶ湯河原温泉の大型貸し別荘のテーマは「引き算の美学」……と書いてある。
 でも、じっくり読んでみても、その意味がよく分からない。
 多分「引き算の美学 もの言わぬ国の文化力」という本の「受け売り」だろう。「引き算の美学」という言葉は、ちょっとした流行りコピーになっているのかも知れない。
 この本の筆者は黛まどかさん。俳人。神奈川県生まれ。一九九四年、「B面の夏」五十句で第四十回角川俳句賞奨励賞受賞された方だ。
 その方の主張は、大量生産・大量消費の足し算の人生から、引き算の美学(人生)へ!
 この世は、消費のための生産としか思えないほど、モノで溢れかえっている。流行を取り入れないと、遅れをとっているかのように洗脳するコマーシャル。
 この洗脳で、借金までしてしまい、余計なモノや手間ばかりが増えいる。
 これは、どう見ても、意味のない「足し算の人生」
 人口減少の日本では、もう大量生産・大量消費の時代は終わった!と筆者は言う。
 足し算の美学、引き算の美学とは、建築の世界で使われている言葉だそうだ。
 西洋建築は足し算で、どんどん華美を求める。 日本の和室は、余計なものは極力省き、本質である一点に集中する。生け花の世界でも「一つのものを愛でるのに余計なものはいらない。むしろ、その『余白』の部分があることで、一点の美を強調することができる」としているそうだ。
 ああ、そうか!
 そこまで読んで、この「別荘一括貸し」のテーマが少し分かった。生け花の世界の様な、カッコイイ「引き算の美学」。歴史ある和風別荘を貸しますよ!と言いたいのだろう。
 この本は「削ぎ落としの美学」を主張しているのだが……その美学が、すぐ、貸し別荘のコマーシャルに使われる。
 皮肉ではないか?(笑)
 大型貸し別荘なんて、余計なものではあるまいか?
 はっきり言わせてもらうが、 大量消費の時代なんて、遠い昔に終わっている。
 格差の激しい今では「消費の格差の時代」なのだ。
 我々貧乏人は、もともとバブル景気とは無縁で、質素に暮らしている。生け花なんて、関係ない。
 これ以上、引き算したら、ゼロになる人生が一杯転がっている。
 訳の分からない犯罪が次から次に起こっている。その「根」に、格差があり、貧富がある。
 オツに構えた「引き算の人生」なんて、あまり意味がないような気もするけど。(ごめんなさい!)

<何だか分からない今日の名文句>
和歌は31文字。俳句は17文字。
この位が、引き算の限界?