16日から17日の未明。戦争法案のデタラメ強行採決に対して、日本人の多くの人が「 抵抗権( Right of Resistance)」を行使した。多くの人が、テレビでこの模様を見た。
人民から信託された政府が「権力の不当な行使」を断行すれば、人民には「政府に抵抗する権利」を持つ!
当然のことである。
5月頃、毎日新聞コラム「牧太郎の大きな声では言えないが」で、ベトナム戦争に反対した「由比忠之進さんの焼身自殺」のことを書いた。
1967年11月11日夕方。「北ベ トナム爆撃を支持する」ために訪米する佐藤栄作首相に抗議する「抵抗権のデモ」が首相官邸前に近づいた時、一人の老人が突然炎に包まれ、仰向けに倒れた。頭、顔、胸……全身やけど。髪は燃え尽きていた。
エスペランティストの元講師、由比忠之進さん。73歳だった。
鞄に「佐藤総理に死をもって抗議する」と書かれた便箋があった。
「ベトナム民衆の困苦を救う道はまず、北爆を開始した米国はこれを無条件に停止する以外ないのだ。ジョンソン大統領に圧力をかける力を持っているのは、アジアでは日本だけだが、その日本の首相が圧力をかけるどころか、北爆を支持するとは……」と怒りが書かれていた。
抗議の焼身自殺だった。
あの時も、今も、日本人には「悪政」を糾す権利がある。
16日、国会前で、横浜で、市民が強く抗議した行動は「抵抗権」に基づく、正義の戦いだ。
不当にも、警察に拘束された人も多い、と聞いた。
不当逮捕だ! すぐ、釈放すべき!
と、同時に、由比忠之進さんの「悲しい焼身自殺」を思い出した。
今回の抗議活動に立ち上がった人々、特に高齢者の方々が苛立っている。限界を感じている人もいるだろう。
でも、まかり間違っても「命を掛けた抗議」であってはならない。僕も70歳だ。辛抱強く、行こうじゃないか。
あの昔、南北ベトナムの戦いは冷戦を背景とした米ソの代理戦争だった。ジョンソン大統領は積極的に介入。 佐藤さんは予定取りアメリカに向かい、日米共同声明で「日本は北爆を支持する」と確認した。
しかし「北爆」は失敗だった。
世界各国で大規模な反戦運動が起こり、1973年のパリ協定を経て、ニクソン大統領はアメリカ軍を撤退させた。
その後も、戦闘は続き、多大な犠牲者を出し、1975年4月30日のサイゴン陥落でようやく終戦した。
アメリカの戦争はいつも失敗である。湾岸戦争、イラク戦争……戦争の行方を占うのは、政治家ではなく、庶民の洞察力である。 由比忠之進さんは正しかった。
戦争下手のアメリカのために「集団的自衛権」を行使するなんて、大バカ野郎だ。そんなバカ内閣に抗議するために、病気になったり、寿命を短くしたりしたら、馬鹿馬鹿しいじゃないか?
「抵抗権」行使には、役割分担がある。
議会で、デモで、メディアで、我々は役割分担する。
16日から17日未明の戦いは、安倍内閣に打撃を与えた。 これは間違いない。
「抵抗権」に目覚めたメディアの人間は、新聞で、テレビで、安倍批判を繰り広げた。あのNHKでさえ、勇気ある職員がギリギリのところで、抗議デモを評価するコメントを放送した。(全体的に見れば、NHKは相変わらず、安倍の言いなりだが)NHKにも、善意の人は多い。
「抵抗権」成就には時間が掛かる。
実は、この「抵抗権」の戦いは「自民党政権の終わりの始まり」。日本の政治に「本当の国民主権」を取り戻す、長い長い革命なのだから。
<何だか分からない今日の名文句>
安倍「戦争ごっこ」で死ぬことはない!