サンデー毎日「牧太郎の青い空白い雲」の2019年8月4日号に
【「奇跡のヒーロー」長嶋茂雄さんを聖火ランナーに】を書いた。
<親しい某医大病院の名医が「ここだけの話だが、我々は長嶋茂雄さんに聖火ランナーになってほしい!と思っている」と言うのだ。
ミスター・ジャイアンツの長嶋さんは2002年12月、アテネオリンピック出場を目指す野球日本代表チームの監督に就任した。翌秋のアジア選手権で中国、台湾、韓国に勝って優勝。オリンピック出場を決めたのだが、04年3月、脳梗塞で倒れてしまう。右半身に麻痺が残った。
アテネオリンピックでの復帰を考えたが、短期間での回復は不可能。長嶋さんは現地アテネで指揮を執ることができず、ヘッド兼打撃コーチの中畑清さんが指揮を執った。結果は3位だった。
その後、長嶋さんは元気になった。が、昨年(2018年)7月、高熱と激しい腹痛を訴え、その名医がいる医大病院に緊急入院した。
胆石だった。一時は「面会謝絶」になったが長嶋さんは常に「奇跡の人」。回復した。
「長嶋さんは昭和日本のヒーロー。ぜひ、聖火リレーに出てほしい。我々は全力をあげてサポートするから」と医師たちは言う。
もし、これが実現したら……それだけで2020年東京五輪は「国民のもの」になるだろう>
丁度、2年前、こう書いた。
その願いが 2021年7月23日の東京五輪開会式で実現した。嬉しかった。
この記事にある<親しい某医大病院の名医>というには安保雅博教授。東京慈恵会医大病院副院長でリハビリテーション医療の権威。僕もリハビリの指導を受けている。
実名を出すと、教授のご迷惑を掛けてはいけない!と思い、この記事では「匿名」にしたのだが、安保組と呼ばれるグループが必死で長嶋さんをサポートした。
走ることは出来なかった。車椅子で国立競技場にやって来た。
でも、一歩、一歩、松井秀喜さんの力を借り、長嶋さんは聖火を繋いだ。
右半身付随の僕には、感動だった。その姿をテレビで見て、ちょっぴり泣けた。
安保先生、ありがとう。
長嶋さん、ありがとう。
拝金主義の東京五輪強行開催には複雑な思いだ。
一部には「森さんが長嶋さんと王さんを利用した」と批判する向きもあったらしい。
そうかも知れない。でも、長嶋さんの聖火を見て、僕は癒された。
国立競技場で開会式が行われている最中、全国の医療従事者が厳しい現実に向き合っていることも忘れてはいけないだろう。
医療関係者の皆さん! ありがとう。
国民の思いを大事に、開会宣言で「お祝い」と言わなかった天皇陛下! ありがとう!
<何だか分からない今日の名文句>
.天皇陛下の五輪開会宣言
五輪憲章をもとに定められた
今回の開会宣言
I declare open the Games of
Tokyo celebrating the thirty second
Olympiad of the modern era
2021年の宣言
私は、ここに、第32回近代オリンピアー
ドを記念する、東京大会の開会を宣言
します。
1964年の宣言(昭和天皇)
第18回近代オリンピアードを祝いここ
にオリンピック東京大会の開会を宣言
します。
コロナ禍で『祝う』という文言はそぐわない!
というのが天皇の思いだった。