田中角栄邸の焼け跡を見に行った”79歳の名物司法記者”高尾義彦さんが逝った

 毎日新聞社会部のかつての同僚記者、高尾義彦さんが、ちょっと前、何かの雑誌に
 【「目白御殿」炎上、自民党裏金事件捜査のさなかに】と題する文章を寄稿していた。
 「今月に入って、久しぶりに田中邸を見に行きましたが、焼け跡がまだ残り、玄関脇には田中直紀元衆院議員の名前で、焼けた建物の解体工事を知らせる掲示板が掲げられています」という書き出し。
 1月8日、東京・目白の田中角栄元首相邸で火災が発生し、木造2階建て住居など800平方メートルを焼失した。
 ロッキード事件で元首相が5億円受託収賄罪の被告となって以来、「目白御殿」を見つめ続けてきた高尾さん。ショッキングな出来事だったはずだ。
 それにしても、僕と同じような年齢なのに、まるで現役記者のように「現場」を取材する。頭が下がった。
 【自民党安倍派を中心としたパーティー券をめぐる裏金事件で東京地検特捜部の捜査が本格化していた時期に重なり、改めて「政治とカネ」に思いをめぐらす機会になった】と書いている。
 高尾さんは現役記者とは違う「切り口」で書いている。素晴らしい!と言うしかない。
 ところが、である。
 19日、社会部から「お知らせ」。
 【日本新聞インキ社長、毎日新聞社常勤監査役、東京本社副代表兼代表室長、編集局次長などを歴任し、東京社会部でも活躍された高尾義彦(たかお・よしひこ)さんが11月12日に病気のため逝去されました。79歳でした】
 驚いた。
 もしかして、彼は「病」を隠して「取材」を続けていたのか?
 言葉が無かった。

 <何だか分からない今日の名文句>
 記者は「現場」で死にたい?