河内敏康記者の「天野篤 孤高のメス」
7月8日の毎日新聞一面に「冥府魔道を歩む」という“奇妙な見出し”があるのを発見した。
冥府魔道? おどろおどろしい。
小池一雄・作、小島剛夕・劇画「子連れ狼」を思い出した。
柳生一族絶滅のため、怨念の旅をつづける拝一刀・大五郎親子の物語。柳生との凄絶な闘い。非情な親子の愛。まさに、冥府魔道。
でも、日本の、海外のトップニュースが並ぶ一面に“魔のみち”の話?
何のことだろう? と、読み出してみるとやはり「子連れ狼」のことだった。
「Sストーリー」という読み物。主人公は「冠動脈バイパス術の専門・天野篤」。2012年(平成24年)2月18日、今上天皇の狭心症に対応した冠動脈バイパス手術をした。
その「奇跡のメス」の名医が「子連れ狼」を読み、自らを「冥府魔道」と呼んでいる、と言うのだ。
医術と「魔の道」? 興味が湧いた。
一面は導入部。4面をフルに使って、その謎解き? を展開する。
「心臓手術6000件、成功率98%」の秘密。回り道だった青春時代の回想……読ませる!
一気に読んだ。
筆者は科学部の河内敏康記者。面識はないが、評判の記者だ。
ともかく、新聞の一ページを一人で書いて、飽きさせない。そして……読み終えた爽快感。新聞はこうじゃなければ。
さすが、毎日新聞! 読ませる記者がいる。
9日は新聞休刊日。「新聞が来ないと調子が出ない」という向きに「お詫びの気持ち」を込めてプレゼントした河内敏康記者の「Sストーリー・天野篤 孤高のメス」。
読んで貰いたい。
さて、 週末は福島競馬の七夕賞を観戦しながら、若干の「被災地取材」。 問題山積。空きビルも目立つ。
10日の夕刊コラム「牧太郎の大きな声では言えないが」はちょっぴり覚悟して「新聞批判」(毎日新聞も含めて)を書いたが……タイトルが刺激的? という意見もあって……ちょっぴり書き直し。
所属する組織の悪口を上手に書くのは難しい。結構、神経を使う。
でも、誰か書かないと……新聞は、劣化し続ける。
新聞は世間から、もっと褒められ、もっと叱られるベキではないか?
<何だか分からない今日の名文句>
手先の訓練 ツメをハサミで切る(天野医師)
記者の訓練 恋文を鉛筆で書く。消しゴムで消す