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荒木寛隆さんは「リトアニア切手」が生き甲斐

 郵趣出版が月刊誌『郵趣』、月刊誌『スタンプマガジン』と共に出版している「日本で一番権威のある郵便切手の研究書」である。
 1992年創刊だから20年以上の歴史がある。一昨年前まで、日本の切手の記事しか掲載していなかったが、少しずつ「海外物」を出すようになって、今年1月の第104号には荒木さんの「リトアニア再独立期の郵便史」が掲載された。
 これを送ってくれたのだ。
 荒木さんとの付き合いは古い。荒木さんは、僕が郵便友の会全国委員長を勤めていた頃の信越地区委員長。僕は日大 1高の2年生、彼が長野高校の3年生だった。
 全学連の運動が過激になり「全高連」を組織しようとした高校生グループが生まれつつあった。彼らの狙いは、会員14万人になっていた青少年団体・郵便友の会の組織の「乗取り」にあった。
 高校生が政治的運動を行うことを全否定するものではないが、彼らの目的は郵便友の会の設立の趣旨とあまりにかけ離れている。
 彼らと戦う立場の僕は、荒木 さんに色々と助けてもらった。
 年上の彼は早稲田大学に進み、後を追うようになったので、これ以後は「先輩後輩の仲」になった。
 大学に入ってから、荒木さんの趣味は「文通」から「切手」に代わった。
 (郵便友の会は国際文通の団体で、切手集めとは 無関係だが、初代全国委員長の平岩道夫さんも「日本一の収集家」になっている)
 切手や郵便物の上に残された痕跡を、文献に基づく知識 、資料とともに拾い上げる。地道な収集である。高価な切手をカネで集めるのとは違う。
 特別、荒木さんは「小国の切手」に興味を覚えた。
 ヨーロッパ北東部、バルト海東岸に南北に並ぶバルト三国の一つ、リトアニアに注目した。
 13世紀以降、リトアニアは大公国として認知され、16世紀半ばからはポーランド王国と合同。その後、衰退し、18世紀には3度にわたり国土が隣国に分割されて国家は消滅した。現在のリトアニアにあたる地域の多くはロシア帝国の領土となった。小国である。
 ベルリンの壁が崩壊した時、彼は「リトアニアが独立する」と直感した。一次、二次大戦でロシア、ドイツ、ポーランド の政治的争いに翻弄され、独立の機会がなかったのだ。
 荒木さんは「独立のチャンス」と読み、「復活1番切手」の入手に走った。彼は1918年12月27日の「リトアニア1番切手」も入手していたのだ。
 もちろん「復活1号切手」も手に入れた。それ以来、20年間「リトアニアの切手」を研究し続け、一昨年、全国切手展(JAPEX2011)で、金銀賞を受賞した。ついに国際切手展に参加する資格を取った。
 今回の「郵趣研究」の論文はその記録でもある。
 羨ましい。これだけ、没頭できる「趣味」に生きる荒木さんは羨ましい。
 彼は三菱銀行の優秀な銀行員だったが、今の方が生き生きとしている。
 リタイアしたら「する事がない人生」と嘆く先輩もいる。これに比べれば……
 やっぱり、人生は……「遊び」を極めるのが人生なのだろう。

<何だか分からない今日の名文句>
切手は小さな外交官