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75歳の誕生日!複雑な思いだが「長生きも芸」だから(笑)

 47歳で、脳卒中で倒れた時、自殺しようか?と思ったこともあった。

 半身麻痺は辛い。言葉も出なかった。

 生きていても意味がない!と思った。

 でも、何となく、生き延びた。結構、楽しく、生き延びた。多分、相棒、遊び仲間、ご近所に恵まれているからだろう。有難い。

 今日10月10日、75歳の誕生日。トシを取った。

 「世間のお役」になっている!とは思わないが、それほど迷惑を掛けている訳でもない。

 長生きも、芸のうち?

 まあ、適当に長生きするか(笑)

 

<何だか分からない今日の名文句>

長寿王マイネルダビテ

〜怪物オグリには負けたけど

五冠馬シンザンを超えた〜

 

 70回を迎える毎日王冠。その長い歴史の中で「連覇」を達成したのはただ一頭。そう「怪物」オグリキャップだけである。

 1988年(昭和63年)10月9日の第39回毎日王冠。この年1月、笠松競馬場から中央競馬へ移籍したオグリキャップは高松宮杯で古馬を降して優勝。重賞5連勝を達成し、天皇賞(秋)の前哨戦として、このレースに臨んだ。

 前の日、府中には雨が降り、多分、芝は稍重だったよな記憶がある。そんなコンデションの中、河内洋が乗ったオグリは幾分、出遅れたような気がした。始めは11頭立てで最後尾だった。

 逃げたのは赤い帽子、ゼッケン3番。無理やり先頭に立ち、後続を7馬身離した③マイネルダビテは、競馬新聞では「無印」だった。

 三角を周った辺りで後続が追いつき「無印の馬はここまでか?」と思ったが、そうでもない。4コーナーで再び、差を広げた。騎手は蛯沢誠治。腕が良い。一瞬だが「オグリが負ける番狂わせ」を想像した。オグリはまだ最後尾の馬群の中にいた。

 後200m。そこからはオグリの一人舞台。まさに「鬼脚」だった。風のように、10頭を一気に抜き去った。

 この時のことを大橋巨泉さんは「古馬の一線級を相手に、スローペースを後方から大外廻って、一気に差し切るなどという芸当は、今まで見たことがない」と激賞。これでオグリは当時の中央競馬の重賞優勝の最多タイ記録となる6連勝。「怪物」と言われることになった。

 逃げた③マイネルダビテはまるで、オグリの剛脚を見ているような仕草でゴール前、動かなくなっていた。0・9秒差の8着だった。

 翌年の平成元年の毎日王冠。逃げ馬マイネルダビテはあえて「連覇」を狙うオグリに挑んだ。

 でも、逃げることすら出来なかった。

 このレースには「怪物」オグリの他に、天皇賞(春)宝塚記念を連勝したイナリワン、さらに前年のダービーで2着。この年の高松宮杯を勝ったメジロアルダン、地方競馬から中央に移籍してきた前年の東京ダービー馬ウインドミルなど、中距離戦線の有力馬が揃って出走。無印のマイネルダビテは逃げることすら出来なかった。

 レースは……レジェンドテイオーが大逃げを打ったが直線に入って失速。残り200mの地点ではメジロアルダンとウインドミルが先頭を争う。さらにオグリキャップとイナリワンが加速し、残り100mの地点で4頭が激しく競り合った。

 最後はオグリキャップとイナリワンがほぼ同時にゴールイン。写真判定の結果、オグリは「連覇」を果たした。

 マイネルダビテはどこにいたのか?それも、記憶にない。

 熱心な競馬ファンでも、ほとんんど記憶に残らなかったマイネルダビテの話を書こうと思ったのは、この「並みの競走馬」が、日本競馬史上初めて「五冠馬」の称号を与えられた「シンザン」に勝ったからだ。

 実は、北海道新ひだか町の「岡田スタッド」で繋養されているマイネルダビテは1960年代、大活躍して1996年に死んだ「神馬」シンザンの重賞優勝馬の長寿記録「35歳3カ月」を23年ぶりに抜いてしまったのだ。

 厳しい調教を経た競走馬の寿命は二十数年と言われる。その中で1984年5月3日生まれのマイネルダビテは超異例の長寿。この夏、それもシンザンの記録を抜いた。

 すこぶる元気だ。背中がややくぼみ、動作はゆったりとしていりが「毛づや」も良好。多分、ストレスがないのだろう。伸び伸びと過ごしているからだろう。

 思わず「並みの競走馬」と書いてしまったが、調べてみると、マイネルダビテは1986年夏、函館でデビュー。87年の共同通信杯4歳ステークス(G3)を制し、生涯成績は24戦4勝。獲得賞金は1億円を超えている。

 オグリように「怪物」ではないが賞金でも、長寿でも「名馬」なのだ。

 重賞優勝馬以外では長野県で繋養されていたシャルロットがことし8月3日に40歳で死亡しているが、マイネルダビテはこの記録に挑戦する。

 人生100年時代の昨今。競走馬にも「長寿が芸」の時代なのだ。

(2019年10月6日毎日新聞

「毎日王冠」号外

「牧太郎の競馬はロマン」から)