TBS「運命の人」で”権力の怖さ”を知れ!

 15日夜、TBSでドラマ「運命の人」がスタートした。
 『運命の人』は、山崎豊子さんが『文藝春秋』で、2005年1月号から2009年2月号まで約5年間連載した作品のドラマ化。モデルがある。
 西山事件。1971年の沖縄返還協定にからみ、取材上知り得た機密情報を国会議員に漏洩した毎日新聞社政治部の西山太吉記者らが国家公務員法違反を問われた事件である。
 第3次佐藤内閣当時、米のニクソン政権との沖縄返還協定に際し、公式発表では米国が支払うことになっていた地権者に対する土地原状回復費400万ドルを、実際には日本政府が肩代わりして米国に支払うという密約をしている。
 その密約をスクープしたのが、毎日新聞の大先輩、西山さんだった。
 西山さんは当時、政治部の外務省キャップ。特ダネを連発するスター記者。新潟支局から本社に配属され、社会部のサツ回りになったばかりの僕が話せるような存在ではなかった。
 政府は密約を否定し、逆に東京地方検察庁特別捜査部が、西山さんが情報目当てに既婚の女性事務官に近づき、情を通じ、情報を取ったとして、情報源の外務省女性事務官を国家公務員法(機密漏洩の罪)、西山さんを国家公務員法(教唆の罪)で逮捕した。
 西山さんが逮捕された夜、編集局の隅にいた。仲間は「一団となって、国家権力と戦う」という意気に燃えていたのだが……「情を通じ」という一言で、報道の自由を盾に取材活動の正当性を主張していた毎日新聞は、かえって世論から一斉に倫理的非難を浴びることになる。
 佐藤首相は西山さんと女性事務官の不倫関係を掴むと「ガーンと一発やってやるか」と漏らしていた。
 権力は怖い。
 編集局の隅に居て、この事件の一部分を見た僕は、正直言って震えた。毎日新聞は一部地区で部数を減らし、経営的にも苦戦する。
 「権力」は怖い。
 TBS「運命の人」は滑り出し順調。その頃の新聞社の雰囲気が良くわかる。是非、見てもらいたい。
 NHKの大河ドラマ「平清盛」は、イケメン俳優を主役に抜擢し、派手な宣伝で人気を煽ったが、1月8日の第1回の視聴率17・3%。昨年の「江ごう~姫たちの戦国」初回の21・7%を下回り、6年ぶりに20%割れ。
 アレと比べれば「運命の人」はデキが良いような気がするが……

<何だか分からない今日の名文句>
「スクープの運命」は紙一重